彼のアルバムはひと通り持っているけど、CAMEL脱退直後のソロアルバム「HEART TO HEART」(日本では未発表)に入っている「Raining All Over The World」は大好きな曲だ。
”世界を覆う雨が僕らを引き離してしまったけど、また再びめぐり合うことができるよ”(大意)と彼は歌うけど、彼はもう戻ってはこない。
雨の降る日に路肩に停めた車の中でこの曲を繰り返し聞いていた。
人生には沢山の出会いがあり、その出会いの数だけ別れがある。
その別れの幾つかには、避けられない悲しみや憎しみや痛みが伴うこともある。
別れは唐突にやってきて褪せた思い出だけを残してゆく。
車のフロントガラスを流れ落ちてくる雨が誰かの頬を伝う涙のように思える。
そして旧友ミック・フリートウッドの助けを得て製作された「THE ART OF LEVITATION」(これも日本では未発表)は、彼の死にあわせてリリースされた。
死を予見していたのだろうか、自主製作盤のようなこのアルバムには、彼が自分の子供達と友人へ宛てた遺書のような、でもとても穏やかな音が収められている。
その中の彼の娘のボーカルで再録音されたCAMEL時代のこの曲は、まるで彼の墓碑銘のようだ。
僕らは生き そして逝く
流れゆく河のように それは誰にも止められはしない (Spirit of the Waterより)